Profile
大阪南ブロック/EASTさかい支部/2014年度入会
株式会社ヤマトステンレス 代表取締役
小居 徹
所在地:大阪府堺市中区新家町624番地/ URL:https://www.yamatostainless.com
設 立:昭和56年5月11日 / 資本金:2,000万円 / 従業員数:17人
事業内容:薄肉ステンレスパイプ製造
私達はステンレスの溶接・加工技術で生活環境を守り、全世界の人々を笑顔にします。
私達は切磋琢磨し、関わるすべての人々に感謝し、共に歩みます。
現在の事業状況
ヤマトステンレスは、主にステンレス製の薄肉パイプを製造・販売する企業です。一般的なパイプと違い、同社が取り扱うパイプの厚さは0.3~0.5mmと非常に薄く、主にガス給湯器の排気管として使用されます。これにより、製品の軽量化や高性能化が実現できることが強みです。ヤマトステンレスは、大手の会社などとも取引を行い、板材からパイプの成形、最終加工までの一貫生産を実現しています。
飲食業から製造業へ、異色のキャリア
同社の代表である小居さんは、飲食業から製造業へと転身した異色の経歴を持っています。中学・高校は有名な私立校に通っていたものの、大学進学は選ばず遊びに明け暮れる日々を送っていました。20歳を過ぎたころ「このままではいけない」と一念発起し、21歳で飲食業に従事することを決意しました。接客を希望していましたが、配属先では厨房業務を担当することに。5年間、料理の現場での経験を積むなかで、自らの可能性を模索していたと言います。
創業から現在にいたるまで
そんな小居さんの人生に転機が訪れたのは、27歳の時でした。父が経営するヤマトステンレスの後継問題が浮上し「会社を潰すか継ぐか」という究極の選択を迫られたのです。小居さんは悩んだ末、父の後を継ぐことを決意し、飲食業を退職。しかしすぐにヤマトステンレスに入社するわけではなく、まずは北海道の協力会社で3年間の修行を経て、30歳で正式に入社しました。
そして、事業承継は予想外の形で進むことになりました。入社から3年が経過したある日、4月1日に病院から「お父さんが危険な状態です」という連絡が入り、急いで駆け付けましたが、父はすでに息を引き取っていました。エイプリルフールの日だったこともあり、冗談かと思ったという小居さん。ですが、現実は突然の事業承継となってしまいました。
代表就任後の苦闘と試行錯誤
小居さんが代表取締役に就任したあとの数年間は、まさに混乱と試行錯誤の連続でした。慣れない業務が次々と押し寄せ、材料の手配や銀行との折衝、新たな取引先との交渉に追われる日々。1年間の記憶がほとんどないほどの忙しさのなかで、彼はただひたすら目の前の仕事を片付けていったと言います。急な代表交代に戸惑う社員も多く、経営者としての重責が小居さんにのしかかりました。それでも、社員一人ひとりが持つスキルを信じ、チームでの協力を大切にしながら乗り越えてきました。
同友会への入会、経営者としての成長
小居さんは、経営者としての成長を求めて、34歳で同友会に入会しました。かつて飲食業時代にも経営者の集まりに参加する機会が多く、同じ立場の人たちとの交流が好きだったことから、同友会への参加も自然な流れだったと言います。同友会での学びは、特に経営指針の策定に役立ちましたが、当初は社員に理念を伝えようとしてもうまく浸透しませんでした。
それでも、代表に就任して2年が経過したころ「このままでは会社の成長が止まる」と感じた小居さんは、経営理念を再び見直すことにしました。理念を三つの要素に分け、朝礼で繰り返し伝えるようにしたところ、少しずつ社員の間に浸透し始めたのです。「理念を噛み砕いて伝えることで、社員たちも理解しやすくなりました」と、小居さんはその効果を実感しています。
地域貢献とオープンファクトリー
同友会での活動を通じて、地域貢献にも力を入れるようになった小居さん。特に「オープンファクトリー」への参加は、地域住民や企業関係者にヤマトステンレスの製造現場を知ってもらう重要な取り組みとなりました。オープンファクトリーは、工場見学イベント「ファクトリズム」に参加する形で行われ、工場の閉鎖的なイメージを払拭(ふっしょく)し、社員たちにも誇りを感じられる機会となりました。見学者のリアクションを直接見られることで、社員たちのモチベーションも向上。安全対策の改善点も発見され、工場全体の改善につながったと言います。
現在の課題と未来へのビジョン
ヤマトステンレスは、少しずつ社内の雰囲気や組織体制を整えつつありますが、課題はまだ多く残っています。特に人材育成と社員の自主性の向上が大きな課題です。「社員一人ひとりが自分で考え、新しい事業を生み出せるような環境を作りたい」と、小居さんは語ります。教育面を強化することで、現場の力を引き出し、さらなる成長をめざしているのです。
一方で、小居さんは未来を見据えたビジョンも持っています。現在の主力製品であるガス給湯器向けパイプは、カーボンニュートラルの流れにより、需要が減少する可能性があります。そのため、事業転換を視野に入れ、新たな価値を創造するための取り組みをすすめています。具体的には、パイプ製造の技術を生かしながらも、新たな分野への展開を模索しており「富士フイルムのような大胆な事業転換を実現することが目標です」と語ります。
同友会の活用方法とこれからの挑戦
小居さんは同友会を活用するうえでのポイントについてこう話します。「同友会はとことん関わることで得られるものが大きくなります。仲間が増え、事業に対する視野も広がります。だからこそ、深く関わることが大切です」。同友会で得た経営者同士のつながりは、ビジネスの視野を広げ、事業拡大のヒントを得る場にもなります。小居さんの笑顔の裏に秘めた熱い思いでこれからも同友会での学びを糧に、新たな挑戦を続けていきます。
(取材:丸山・井上・寺岡/文:丸山/写真:寺岡)
同友会 私の楽しみ方
まず、同友会に入っているのであれば同友会活動に参加しなければ意味がないと思います。さらに、参加するなら、各委員会や小グループ活動など、積極的に参画する方がより楽しむことができると思います。
仲間づくりという観点から考えてみても、高い頻度で会うからこそより仲が深くなりますし、本気本音で関わる機会も増え、より深い学びにもつながると考えられます。
また、女性経営者全国交流会や青年経営者全国交流会などの全国行事に参加すると、選りすぐりの経営体験報告を拝聴できるだけでなく、大阪府内外の方々と広く交流でき異なる観点からの意見交換もできるよい機会になると思います。
ミクロとマクロどちらの視点からも物事を見ることで、視座も高まり、自社の発展につなげられると思います。