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Osaka Doyu-Kai

vol.8

「 一人ひとりが輝く未来を切り拓く企業」

精密板金技術で医療・介護分野を支える モノづくりへの情熱~中小企業家同友会での学びを生かして~

Profile

中河内ブロック/東大阪第一支部/2022年度入会

株式会社水野製作所 代表取締役

水野 佑哉

所在地:大阪府東大阪市中石切町6丁目3番69号 / URL:https://mizuno-works.co.jp
創 業:1972年5月1日 / 設 立:1990年5月1日 / 資本金:1,000万円
従業員数:4人 / 年 商:9,750万円(2023年度)
事業内容:医療機器・医薬機器・介護機器の板金設計・製造・販売など

私たちは、人との繋がりを大切にし時代の変化に適応する
幸せを追求するヒトづくり企業である

 大阪府東大阪市に拠点を構える株式会社水野製作所は、医療機器・医薬機器・介護機器といった高度な精度と美観性が求められる分野に特化した精密板金加工のスペシャリスト集団です。創業から半世紀以上にわたり培ってきた熟練の技術と、時代の変化に柔軟に対応する進取の精神を融合させ、顧客からの厚い信頼を獲得してきました。近年は、中小企業家同友会での学びを経営に生かし、更なる発展を遂げています。

 本稿では、水野製作所の歴史、技術力、そして未来への展望を、同友会での学びとあわせてご紹介します。

 

 

シベリア抑留からの創業、そして事業の多角化

 水野製作所の歴史は、創業者である水野仲治氏の波乱に満ちた人生と深く結びついています。終戦後、シベリアに抑留されていた仲治氏は、極寒の中でSL(蒸気機関車)の修理工として従事し、溶接の熱で暖を取りながら厳しい冬を乗り越えたといいます。この経験が、後の人生における溶接技術への情熱を育む原点となりました。帰国後、仲治氏は溶接工として腕を磨き、1972年に水野製作所を創業しました。

 当初は溶接事業を専門としていましたが、1990年の法人化を経て、仲治氏の息子である前代表の水野康行氏が事業の多角化を推進します。溶接技術を基盤としながらも、板金加工の一貫生産体制を構築し、高精度が要求される医療機器分野への参入を果たしました。この事業転換が、水野製作所の飛躍的な成長の礎となりました。

 2022年には、康行氏からバトンを受け継ぎ、水野佑哉氏が代表取締役に就任しました。佑哉氏は、創業者のDNAを受け継ぎながらも、新たな視点と発想で水野製作所の未来を切り拓いています。

 

 

妥協を許さないモノづくりへのこだわり

 水野製作所の強みは、創業以来培ってきた高度な精密板金加工技術にあります。ブランク加工(切断・曲げ)から溶接、バフ研磨まで、一貫生産体制を自社で構築しており、高品質な製品を安定的に供給できる体制を整えています。特に、溶接と表面仕上げの丁寧さには定評があり、目に見えない部分にも妥協を許さないモノづくりへのこだわりが、顧客からの信頼を支えています。

 同社が手掛ける製品は、歯科で使用される治療用装置と一体になったデンタルユニットやレントゲン装置の内部品、介護用浴槽の部品など、人々の健康と生活に密接に関わるものが中心です。これらの製品には、高度な精度と耐久性、そして安全性が求められるため、水野製作所の技術力と品質管理体制が重要な役割を果たしています。

 また、同社は長年培ってきた技術に加え、最新の設備も積極的に導入することで、更なる品質向上と生産効率の向上に努めています。熟練の職人による伝統的な技術と、最新鋭の設備が生み出す相乗効果が、水野製作所の製品に高い付加価値を与えています。

 

 

若き後継者が見据える未来と中小企業家同友会での学び

 現代表の水野佑哉氏は、大学卒業後、作家・沢木耕太郎の紀行小説『深夜特急』に影響を受け、バックパッカーとして半年間の旅に出ました。その後、水野製作所に入社しましたが、当初は父親である前代表との衝突も多く、葛藤の日々を送っていたといいます。

 転機となったのは、2008年のリーマン・ショックと、それに続く2011年の東日本大震災でした。厳しい経済状況のなか、前代表から工場を縮小し、二人で事業を続けることを提案されたことをきっかけに、佑哉氏は経営に対する意識を大きく変えます。それまで「営業してこい!」と指示されるだけで、具体的なノウハウを教えられていなかったにもかかわらず、自ら積極的に行動し、大手企業との取引をめざすようになりました。

 この経験を通して、佑哉氏は経営者としての自覚を深め、水野製作所を更なる高みへと導く決意を固めます。近年は、中小企業家同友会に積極的に参加し、経営理念の確立や社員教育、地域貢献など、多岐にわたる分野で学びを深めています。同友会での学びを通して、経営者としての視座を高め、社員とのコミュニケーションを密にすることで、より強固な組織づくりをすすめています。特に、同友会で重視されている「人を生かす経営」の実践を通して、社員一人ひとりの成長と幸福を追求する経営を実践しています。

 

 

人とのつながりを大切にする経営理念と中小企業家同友会の影響

 水野製作所の経営理念は「私たちは、人との繋がりを大切にし時代の変化に適応する、幸せを追求するヒトづくり企業である」というものです。この理念には、従業員とその家族・顧客・取引先など、水野製作所に関わるすべての人々とのつながりを大切にし、共に成長していくことをめざすという強い思いが込められています。

 この「人との繋がりを大切にする」という理念は、中小企業家同友会の理念とも深く共鳴しています。同友会では「よい会社をつくろう」「よい経営者になろう」「よい経営環境をつくろう」という三つの目的を掲げており、水野製作所はこの理念を経営に取り入れることで、社員の主体性を引き出し、よりよい企業文化の醸成につなげています。

 

 

東大阪の地から世界へ

 水野製作所は、東大阪というモノづくりの街で、半世紀以上にわたり事業を継続してきました。東大阪は、中小企業が集積し、高度な技術を持つ企業が数多く存在することで知られています。水野製作所も、そのような環境のなかで切磋琢磨しながら技術を磨き、成長を遂げてきました。

 今後は、培ってきた技術と経験を生かし、更なる事業拡大をめざしていきます。国内市場だけでなく、海外市場への展開も視野に入れ、水野製作所の技術を世界に発信していくことをめざしています。

 

 

まとめ

 株式会社水野製作所は、創業者の情熱を受け継ぎ、高度な精密板金技術で医療・介護分野を支える企業です。熟練の技術と最新の設備、そして何よりもモノづくりへの情熱が、同社の強みを支えています。中小企業家同友会での学びを生かし、更なる成長をめざす水野製作所は、これからも人々の健康と生活に貢献するモノづくりを追求し、更なる発展を遂げていくことでしょう。

 

(取材:石田、上田、中西/文:石田、佐藤/写真:上田)

 

 

同友会 私の楽しみ方

 同友会は一度退会していましたが、社長に就任したタイミングで再入会しました。退会している間は「なにわあきんど塾」や「東大阪青年会議所」で活動していましたが、社長になってから、相談できる相手がいない孤独感や、経営に関する情報不足に悩むようになりました。そのなかで、共に悩みを共有し、成長できる仲間の大切さを感じ、再び同友会に戻ってきました。

 同友会の魅力は、地域を超えた学びができることです。例えば、東京出張の際に事務局へ連絡し、現地の例会に飛び込みで参加したこともあります。地域ごとに異なる課題や視点に触れることで、多くの気づきや学びを得ることができ、それが経営判断にもつながっています。行動さえすれば全国どこでも学べる環境があるのは、本当にありがたいと感じています。

 これまでは若手として、先輩方から多くのことを教えていただく立場でしたが、これからは自分の経験を生かして、周りに気づきを与えられる存在になりたいと思っています。仲間と共に成長し、学び合える同友会をこれからも楽しんでいきたいです。