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Osaka Doyu-Kai

vol.8

大阪中央ブロック特集: 「 激動する変化に対応する企業」

永続発展企業をめざし、ねじからねじ以上の価値を

Profile

大阪中央ブロック/西支部/1997年度入会

第一ボールト株式会社 代表取締役社長

上林 浩二

所在地:大阪府大阪市西区安治川1-1-6/創業:1957年/資本金:4,500万円/社員数:60名/売上高(単体):25億円
グループ会社:ファスニング・ディワン(株)(冷間圧造部品製造販売)、(株)アイテクス(ねじ直需商社)
業務内容:ねじ類全般の直需向け販売・国内卸

会社概要と第二創業

第一ボールトの創業者は現会長のお父様、現会長は上林さんのお義父様。上林さんは、7年前の60期目で社長就任。その後、新築移転した新社屋の稼働スタートの時を「第二創業」と定義し、それまでの取引先や商材、人材を変えずに「新しい会社」としての方向性を示し、変革をめざしています。

 

 

理念体系の構築

創業者がつくった社是だけが存在していましたが、上林さんは言語化しなければ社員には伝わらないと考え、第二創業を機に理念体系を構築し、社員に共有しました。同友会の経営指針確立・実践セミナー受講が役立ったそうです。

経営姿勢は、商社というものは仕入れ先やお客様あってこそという考えをもとに、自分たちだけがもうかればよいのではなく「儲かるより、愛されよう」と掲げています。お客様を「パートナー」ととらえ「感謝の気持ちを持ちながら価値を提供し、社会にとってなくてはならない存在であり続けよう」ということを行動指針として、常に社員に話しています。社員一人ひとりは誠実でよい人柄だけれど、さらに周りとの協調性を持って取り組んでほしいし、自分に自信を持てるようになってもらいたいと考えています。

これまでの事業活動において財務的には銀行からの信用もある 「強い会社」になってきていて、さらに次の段階である「よい会社」をめざそうと社員に話しています。「よい会社」とはどんな会社であるかを社員に問いかけ、社員自らが「やりがい」と「働きやすさ」を両立した働きがいのある職場をつくっていけるように取り組んでいます。

上林さんは9年前の入社後、後継者の立場として社員の不満を拾い上げて実現する姿勢を取ってきました。社長となった今は会社として、従来の「会社のやり方に個人を合わせる」から「100人い れば100通りの働き方がある」と個々の働き方を尊重し応援する方針に転換し、理想の職場環境の改善を追求しています。

 

 

組織改革と意識改革

同友会活動参加のきっかけは、採用活動の必要性を強く感じてい たからでした。新しい取り組みをしていくには、柔軟な考え方で対 応できる人材が必要であり、また、企業文化の形成には新卒採用が 不可欠と考え、全体の3割を占めることを目標に新卒採用を続けています。

見学にさえ来てもらえれば、新社屋と自分の話とでその後の内定までの道筋は立つけれど、来てもらうまでが課題ととらえている上林さんは、同友会の人脈を活用して積極的に採用活動に取り組んでいます。ホームページに採用サイトを別立てして学生へのメッセージを伝えたり、学生が入社後の自身の姿を描けるような内容を掲載したりしています。また、SNSを活用して若者層にアプローチするなど、学生と年齢の近い若手社員を中心に工夫を重ねています。

ベテラン社員も70歳まで働けることを実現しながらですので人員が増えていきますが、上林さんは増えた人数に合わせて売上や利益を上げていくのだという考えを持っています。そのため一人当たりの利益を強く意識していて、社員にも一人当たりの付加価値を高めていく必要があることを意識づけています。

新社屋では、DX化による業務の効率化や業務改善に取り組む一方で、オープンフロアやジョブローテーションを導入して既存業務の部門間の理解を深められるようにするなど、業務連携を促進しています。

 

 

ねじから、ねじ以上の価値を。

地方では人手不足が深刻化しており、これまでお客様側が担っていた業務を同社が取り込んでいくことが増えてきています。上林さんは、ねじだけにこだわることなく、お客様が求めるねじ以外の商材やサービスも提供していきたいと考えています。

付加価値を新規のお客様に効果的に伝えるのは難しく、商社の場合は、お客様が商品を使うのではなくその先のお客様ですのでなおのこと。永続発展企業をめざすには、お客様に自社の魅力を理解してもらい信頼関係を築いていくことが重要であり、そのためにまずは自分たちのファンになってもらえるよう、社員それぞれが日々の業務に愚直に取り組んでいく必要があると話していました。

 

(取材:岡室・谷澤・北川/文:北川/写真:岡室)