
Profile

大阪南東ブロック 西成・住之江支部 2017年度入会
株式会社新和製作所 代表取締役社長
清水 修吉
所在地:大阪府大阪市住之江区緑木1丁目4-101
他高石、西成2拠点 計4拠点 /
URL:https://shinwa-seisakusyo.com
創 業:1969年 / 設 立:1992年 / 資本金:7,600万円 /
年商:18億5,600万円 (2024年9月期)
社員数:95名(うち38名ベトナム・1名スペイン)
パート社員3名
事業内容:空調機器・特殊空調機器・環境機器・板金・
製缶組立加工全般空調機器メンテナンス(サービス事業)
一. 私たちは、多様なニーズに応え、技術・開発力を活かし、お客様に満足していただける企業を目指します。
一. 私たちは、全社員が人間的に成長できる会社、働きやすい会社を目指します。
一. 私たちは、あらゆる空間に快適な空調環境を提供し、社会に貢献します。
現場からスタート、父の一言が覚悟を決めさせた
(株)新和製作所は、清水修吉さんの父が創業した町工場が原点である。清水さんが入社したのは1992年、当時19歳。本人いわく「勉強は嫌いで遊ぶことばかり考えていた」と振り返るが、現場での実務経験を積むなかで頭角を現し、26歳のとき大きな転機を迎える。工場責任者の退職を機に、父から工場運営のすべてを任されることになったのだ。「見積もりも営業も未経験で『無理だ』と断ったが『全部見てやるからやってみろ』と背中を押してくれた。頼られていると感じて嬉しかった」と当時を語る。
しかし現実は甘くなく、見積もり作成に悪戦苦闘しながら深夜まで現場に立ち続けた日々もあった。ようやく完成させた見積書を父に見せると、返ってきたのは「自分で考えろ」の一言。厳しくも温かい父の言葉が、清水さんの経営者としての礎となったという。
その後、空調機器業界の中堅メーカーが倒産するというニュースを機に「自社で完成品までつくる体制に挑戦しよう」と決意。2005年に製造部長に就任すると、大型空調機器の製造に乗り出した。高度な設計力、溶接、組立といった技術が求められる分野だが、着実に育った技術者たちの力を信じて新規事業を軌道に乗せた。現在では、自動車メーカーや製薬会社、大阪メトロ北浜駅など、多彩な納入実績を誇る。
また、清水さんは技術革新への関心も強い。「冷却サイクルは100年間ほとんど進化していない。ここにブレイクスルーが起これば、より小型で高性能な空調機が生まれるはず」と語り、完成品部門を軸としたさらなる技術革新と設備投資を視野に入れている。町工場から始まった現場力を強みに、次の成長を見据えている。
同友会との出会いが「人間尊重」の経営を教えてくれた
経営のステージが上がり社員数も増えていくなかで、清水さんは2017年ごろ、組織にまん延する「指示待ち体質」に強い危機感を抱いていた。そんなとき、同業者の勧めで同友会に入会。2018年には経営指針確立・実践セミナーに参加し「社員はパートナーだ」という言葉に衝撃を受けたという。
「まさにハンマーで殴られたようでした。それまで社員は『育てる対象』と思っていたけれど『共に歩む存在』なんだと気づかされたんです」。
この気づきをきっかけに、同社では「全社員が人間的に成長できる会社、働きやすい会社を目指す」という経営理念を明文化。現在もこの理念は社員と共有され、制度設計や取り組みに息づいている。
さらに同友会での学びを通じて「社員を守る覚悟」や「人間尊重の経営」といった考え方に触れ、清水さんの経営観は大きく変化した。「社員を大切に」という言葉の本質を深く理解するようになり、今では「社員とその家族を守ること」が信念となっている。
「自分が変わらないと相手も変わらない」。この言葉も、経営指針確立・実践セミナーを通して得た大切な学びだという。かつて社員から「社長、最近なんか変わってきましたね」と声をかけられたときには「よっしゃ」と心の中で思わずガッツポーズをしたと笑顔を見せる。言葉だけでなく、背中で伝えることの大切さを実感した瞬間だった。
さらに清水さんは、学びと実践を一体として捉え、社員だけでなく顧客とも共有している。同友会での学びの魅力を伝えることで、社員や取引先が同友会を紹介する好循環も生まれつつある。「共に学び、共に成長する」という姿勢が、会社の文化として根づき始めている。
社員が主体となって会社を創る
(株)新和製作所では、経営理念だけでなく企業文化として「社員が主体となって会社を創る」風土が根づいている。清水さんが重視するのは、社員が自ら考え行動する文化だ。その象徴が社員発案による「長期ビジョン研修」。社長をあえて外し、社員だけで未来のありたい姿を議論し、社員食堂や託児所、バーベキュー場のアイデアまで飛び出す。この働く人の視点が、会社の方向性を形づくっている。
同社は「社員一人ひとりが自分ごととして考え、主体的に動ける会社」「ものづくりの力で社会に貢献する会社」「将来はグループ会社として切磋琢磨できる会社」という明確なビジョンを掲げ、技術と人の力で快適な空間と未来を創造する使命を共有している。実際に、現場では社員の創造性が尊重され、ある社員が自主的に制作した富士山や龍の金属装飾作品が社内外で話題を呼んだ。これらは技術力の発信にとどまらず、技術者が誇りを持てる職場づくりを象徴している。
外国人社員との共生もすすんでおり、現在はベトナム出身者を中心に39名が在籍。全員を正社員として雇用し、研修やキャリア支援も日本人と同様に行っている。女性社員の活躍も目覚ましく、自ら志願して溶接に挑戦する姿も。男性社員も積極的に指導に加わり、現場の一体感を高めている。
「パパはヒーロープロジェクト」として社員の家族を職場に招く取り組みも実施。「立派になったなぁ」と涙する家族の姿は、働く誇りを支えている。また、休憩室のリフォームも社員主導ですすめ、芸術系出身の社員が壁面アートを担当。外注せず自分たちで作り上げることで「自分たちの職場」という愛着と、社員同士の交流を生み出している。
未来を見据え、社員とともに「夢を実現する会社」へ
(株)新和製作所では、社員が描いた未来図として空調機器のBtoC展開、アウトドア製品の販売、コンテナ施設の活用、ペットホテルの運営、ベトナム法人設立など多彩なアイデアが並ぶ。「社員が夢を語れる会社でありたい。それを一つずつ形にしていくことが経営者である私の役割です」と清水さんは語る。すでにベトナム法人設立は進行中で、現地では設計・CAD・営業技術を担う人材を育成し、帰国を希望する社員の活躍の場も確保するなど「温かさ」と「戦略」を両立するビジョンを描く。
「会社は社長のものではなく、社員みんなのもの」。この信念のもと、社員が主体的に動き、笑顔で働く姿が日常にある。人の成長に真剣に向き合い、その結果として利益を生み出している点が(株)新和製作所の強みだ。
清水さんがめざすのは、社員が働く楽しさを実感し、自ら学び成長し続ける「共創型」の企業。家族のような職場風土と多様性ある組織構成を現実のものとし、地域や社会への貢献を果たしている。「10年後、私の役割が終わっても、社員たちの手で会社がしっかりすすんでいけるように」と、清水さんの視線は常に未来を見据えている。
(取材:藤本・石田・堂上/文、写真:石田・堂上)
同友会 私の楽しみ方
多様な業種の経営者と交流し、実践的な知見を学べることが楽しみです。議論や体験共有を通じて自分の視野が広がり、経営スキルも自然と向上しています。そして学んだことを自社に持ち帰り、実践することで会社の成長、社員さんの成長にもつながります。仲間との切磋琢磨が自分自身の成長にも直結し、大きな刺激と学びを得られる貴重な場です。