Profile
中河内ブロック/東大阪第一支部/2020年度入会
大翔工業株式会社 代表取締役
福田 大樹
所在地:工場 大阪府東大阪市池島町6-6-15 瓢箪山事務所
大阪府東大阪市神田町2-8 瓢箪山駅前ビル303号室
URL:https://daisyou-osaka.jp
設 立:2012年 / 資本金:300万円 / 年商:1億1千円(2024年度) / 社員数:8名
事業内容:製缶・配管・溶接業
この月刊誌を開いたあなたも、もしかしたら同じ悩みを抱えているかもしれません。大翔工業(株)〈以下 大翔工業〉の福田大樹社長も、かつては経営の崖っぷちに立たされていました。主要顧客への依存度は85%。意を決した業態転換の末、会社は2,000万円の大赤字に転落します。そんな福田社長を変えたのは、彼自身が「1年で辞めるつもりだった」と語る同友会と、そこで学んだ指針経営でした。幽霊会員だった男が、いかにして会社を黒字に戻し、今や訪問から受注率50%を誇る「選ばれる企業」へと変貌を遂げたのか。赤裸々な告白から、その真実をひもときます。
1.会社設立と最初の試練:顧客依存が招いた危機
大翔工業は、福田社長の父が2011年に創業、2012年に法人化しました。製缶業を主軸とし、粉体装置メーカー向けの周辺設備を製作しています。福田社長は高校卒業後、外部でのキャリアを経て入社。溶接技術にたけた兄がいるなかで、自身の役割は対外対応や人材活用にあると見定めました。
しかし、当時の経営は特定の主要顧客1社に売上の85%以上を依存するという、極めて脆弱(ぜいじゃく)な状態でした。福田社長は「このままでは共倒れになる」と危機感を抱き、大きな決断を下します。それが、出張工事主体から大阪での内作中心へと切り替える「業態転換」でした。
この転換は、顧客を一時的にゼロにし、3年間で累計2,000万円の大赤字を計上するという代償を伴いました。しかし、この危機的状況が、福田社長を経営者として覚醒させます。代表交代は、この赤字期に行われました。「赤字のタイミングで承継したからこそ、株価の上昇が抑えられ、スムーズだった」と、福田社長は図らずも危機が世代交代の契機となったことを振り返ります。

2.幽霊会員が変革者に?同友会での「劇的転換」
経営の苦境の最中、福田社長は同友会の例会に参加しました。討論のレベルの高さに刺激を受けたものの、入会は保留。しかし、当時の代表理事らの熱心な勧誘を受け、渋々入会を決意します。入会後、約2年間は活動にほぼ参加しない「幽霊会員」状態でした。
【転換点:経営指針確立・実践セミナー(以下 指針セミナー)での覚醒】
会社が崖っぷちにあるなかで、福田社長はわらをもつかむ思いで指針セミナーの受講を決めます。結果は劇的なものでした。
•意識の変化:経営課題を「他責」から「自責」へ転換。
•業績の変化:受講後の年に業態転換後「初めての黒字」を達成。売上は6,400万円から7,300万円へ伸長し、増加分の6割が営業利益として残るほど収益性が向上しました。
「この結果がなければ、私はまだ同友会を疑っていたかもしれない」と福田社長は語ります。自らが変わり、理念とビジョンを語ることで、職人の意識も向上し、組織が変わったことが最大の成果でした。

3.受注率50%の法則:小さな会社こそ「指針経営」が必要
福田社長は、指針経営の学びを具体的な営業戦略に落とし込みました。飛び込みやFAXでのリーフレット送付、産業支援機関への訪問といった地道な種まきを続けた結果、驚異的な受注率を達成します。
「討論や発表で語彙(ごい)力・思考力が向上し、商談の質が上がった」と福田社長。その成果が、会社訪問まで到達できれば受注率約50%という驚きの数字に表れています。顧客依存度も以前の85%から、現在最大35%まで分散させることに成功しました。
福田社長が重視するのは、単なる「安さ」ではなく「品質・信頼」を軸とした関係構築です。「指針経営は、大人数の会社向けだと思われがちです。しかし、成長させたいなら小さい会社ほど必須です。現場が忙しくても、毎日15分、20分でも考え続ける方が、1日2時間考えるより重要です」と、継続の重要性を強調します。
指針書は他社事例を参考にしつつ、理念・ビジョン・方針・計画の4点を軸に自社向けにブラッシュアップ。昨年から従業員と共に指針会議を実施し、今年初めて製本版を社員に配布するなど「小さな一流企業」という方向性を共有しています。

4.未来への羅針盤:外部環境を乗り越える哲学
昨年は好調を受けて投資を拡大したため、売上減と固定費増が重なり、前期は業績が悪化しました。しかし福田社長は「人生は楽しもう」を基本姿勢に、危機感を共有しつつも現場では明るく振る舞い、士気を維持しています。
福田社長は、トランプ関税や総裁選など、外部環境をミクロ視点で分析し、受注がどう変化するかを予測するそうです。目先の課題として「顧客拡大」を最優先とし、2026年から再び10年ビジョンに向けた歩みを再開する計画です。
福田社長の言葉は、あなたの胸に響いたでしょうか?もし今、あなたがかつての福田社長のように「どうすればいいか分からない」と立ち止まっているなら、まずは毎日20分、会社の未来を考える時間をつくってみませんか。小さな一歩が、あなたの会社をV字回復へと導く、最大の武器になるはずです。

〈取材:辻・中西・赤坂/文:辻/写真:赤坂〉
同友会 私の楽しみ方
対等な関係で年齢に関係なく意見を言い合える仲間ができ、業種や年齢も違う経営者と切磋琢磨し成長できることが楽しいです。
