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Osaka Doyu-Kai

vol.5

同友会の活動を自社経営に生かす

学びを力に、人が育つ組織をめざして

Profile

大阪北ブロック/三島支部 2013年入会
大阪北ブロック/三島支部 2008年入会

並川洋子税理士事務所 共同経営者 / 税理士

鹽井 雅也 / 並川 洋子

所在地:大阪府高槻市城西町3-16 三浦ハイツ301号 /
URL:https://namikawa-tax.com / 設立:2007年7月
パート数:4名 / 事業内容:税務会計、税務業務

私たちは税務・会計を通じて豊かな社会への架け橋となります

1.私たちの喜びはお客様の発展と成長です。
2.私たちはともに育ち幸せになることを目指します。
3.私たちは豊かな社会を創造するお手伝いをします。
私たちの仕事は豊かな社会を作るための一端を担っています。 豊かな社会とは、だれもが等しく社会に貢献することができ、その社会から幸せを受け取ることができる社会です。 私たちは社会の一員として、税務・会計の仕事を通じて社会をより豊かなものにすることを目指します。

「開業したときは、お客様は一件もありませんでした」

 穏やかな口調で当時を振り返る並川さん。並川洋子税理士事務所の歴史は、2007年、一人での独立開業から始まりました。前職の顧客を引き継ぐことなく、島本町の自己所有の空き家を事務所としてスタートした、まさにゼロからの挑戦でした。

 

 開業当初は、以前勤務していた税理士事務所でアルバイトを続けながら営業活動を行っていました。しかし「このままでは覚悟が決まらない」と半年で退路を断ち、本業一本に専念します。その直後に大きな相続案件を任され、無事にやり遂げたことが事務所経営の礎となりました。

 

 同じ頃、並川さんは大阪府中小企業家同友会(以下「同友会」)へ入会しました。「主な顧客である中小企業のことを理解しておきたい」という思いが、その後の経営を大きく方向づけました。

 

 その後、結婚を機に事務所を高槻市野見町へ移転し、顧問先も着実に増加。そんななか、家族の介護という転機を迎え、初めてパート従業員を採用しました。そのとき採用した方々は現在も勤務を続けており、その後も仲間が加わりつつ、少人数ながら安定した組織へと成長してきました。

 

 一方、共同経営者の鹽井さんは損害保険業界から転身しました。営業活動を通じて税理士という仕事の重要性を実感し、縁あって事務所へ加わりました。営業や組織運営を担うとともに、同友会運動にも積極的に取り組み、現在では景況調査などで中心的な役割を担っています。

 

 

「人が辞めない組織」の理由

 並川洋子税理士事務所には、創業以来、退職者がいません。その理由をパート従業員に尋ねると「働きやすいから」という言葉だけでは表現できない答えが返ってきました。

 

 「ここで働くことで、自分が成長していると感じます」

 

 「税金や社会保険など、自分の人生にも役立つ知識が身につきます」

 

 「家事をするなかで、仕事に来ることが気分転換になります」

 

 パート従業員の多くは子育てなどを経て社会復帰した方々です。未経験からのスタートでも、一つひとつ丁寧に教え合う文化が根付いています。

 

 「一度で覚えられる人なんていません」

 

 そんな言葉が自然に交わされる職場だからこそ、安心して挑戦できます。

 

 

 

 また、子育てや介護、体調不良など人生のさまざまな出来事にも柔軟に対応しています。あるパート従業員は「体調を崩した際『週に一回でも来られたらいいよ』と声を掛けられたことで働き続けることができた」と話します。

 

 制度だけではなく、一人ひとりを理解しようとする姿勢が、従業員の安心につながっています。しかし、それは甘さではありません。

 

 並川さんは「いつか別の職場へ行っても通用する人材になってほしい」と話します。単に作業を教えるのではなく、なぜそうするのかという根拠まで伝えることで、自ら考えられる人材を育てています。鹽井さんも「どこの事務所へ行っても『並川洋子税理士事務所で育った人なら大丈夫ですね』と言われるようにしたい」と語ります。人材を会社のためだけでなく、社会全体の財産として育てようとする姿勢が、この事務所の大きな特徴です。

 

 

学びを実践へ、そして地域へ

 「今の事務所があるのは、同友会で学んだからです」

 

 鹽井さんはそう語ります。同友会で学んだ、目的⇒目標⇒行動計画という考え方は、事業だけでなく同友会運動でも実践されています。

 

 鹽井さんは大阪産業構造研究会の景況調査を取りまとめる上で、ただ「回答してください」と呼び掛けるのではなく「この数字目標を私が達成したいのです」と伝えつつ、各支部の状況を分析し、誰がどのように働き掛ければ回答率が上がるのかを整理しました。そして、役員同士で情報を共有しながら、一人ひとりへ丁寧に声を掛ける仕組みをつくりました。

 

 「役割を任された以上は、それを達成するのです」

 

 その言葉どおり、私利私欲ではなく組織全体の成果を考えて行動する姿勢が、多くの信頼につながっています。

 

 並川さんは何事も「(深刻に、ではなく)真剣に取り組むから真剣に面白い」と話します。従業員教育でも組織運営でも「何のために行うのか」を共有することを大切にしています。目的が共有されているからこそ、人は主体的に動き、組織も成長していくのです。

 

 会社で実践したことを同友会へ持ち帰り、同友会で学んだことを再び会社で実践する。その循環こそが、二人の経営の原動力となっています。

 

 

景況調査を振り返りの機会に

 景況調査を取りまとめてきたなかで、鹽井さんは事業の現状だけでなく経営者の姿勢も見えるようになってきたと言います。例えば「利益は小さいが採算は取れている」という数字から「投資をしておらず、減価償却が増えない」ことが予想され「事業の将来を意識していないのではないか」という仮説が立てられるというものです。

 

 また、近年では景況調査の回答数が増えるだけでなく、記述式の設問にしっかり回答している人が増えています。これにより、景況調査の集計結果に信ぴょう性が出ているとともに、景況調査への回答が回答者にとっての振り返りの機会として機能していると感じているそうです。

 

 

「人を生かす経営」を未来へ

今回の取材を通じて強く感じたのは、お二人が会社の成長を売上や規模だけで語らないことでした。従業員が安心して働き、成長を実感できること。顧問先企業の発展に寄り添うこと。そして地域の中小企業が元気になること。その積み重ねこそが事務所の価値だと考えています。

 

「税理士の仕事は申告書をつくることだけではありません。」

 

経営者の悩みに寄り添い、ともに考え、ともに歩む。

 

そのために自らも学び続ける姿勢が、お二人にはありました。

 

同友会で学び、自社で実践し、その経験を再び仲間へ還元する。その繰り返しが、会社を成長させ、人を育て、地域を豊かにしていきます。

 

「まずは参加してみてください」

 

最後に会員へのメッセージを尋ねると、お二人はそう口をそろえました。例会に参加し、役割を担い、実践することで初めて学びは自分のものになる。そして、その経験を率直に語り合える仲間がいることが同友会の魅力だと言います。

 

 ゼロから始まった一つの税理士事務所は「人を生かす経営」を実践する組織へと成長しました。その歩みを支えてきたのは、特別な経営手法ではありません。一人ひとりを信頼し、学び続け、実践を積み重ねてきた姿勢です。

 

 並川洋子税理士事務所の挑戦は、従業員、顧問先、そして地域社会へと広がり続けています。その姿は「人を生かす経営」の実践が企業の未来をつくることを、静かに、そして力強く示していました。

 

 

 

〈取材:山田・香川・岡坂/文:岡坂/写真:山田・岡坂〉