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Osaka Doyu-Kai

vol.4

特集「 今こそ、変化の先に踏み出そう!」

同友会の学びを 社員とともに愚直に実践

Profile

大阪中央ブロック/中央南支部/2009年度入会 2023年度中央南支部支部長

有限会社 富士光芸 代表取締役

柊 彰治

所在地:大阪市中央区南久宝寺町3丁目
U R L :https://fujikougei.co.jp
設 立:1984年9月 /資本金:500万円
年 商:7,687万円(2022年度) / 社員数:6名
事業内容:紙媒体を中心としたグラフィックデザイン・DTP制作会社

紙媒体中心のデザイン制作

富士光芸の事業内容は、紙媒体を中心としたグラフィックデザイン・DTP制作(PCによる印刷物データ 制作)で、販売促進を目的としたさまざまな制作物の企 画も行っています。印刷会社や広告代理店といった顧客 からは、これまでの実績をもとに紹介で仕事が入ってきています。

また最近では「私たちは、制作で『想い』を『伝える』会社です。」をキャッチコピーに、Webページや動画制作にも領域を広げつつあります。

怒鳴り散らす日々だった

富士光芸はお祖父様が1965年に創業。柊さんは、他業種の会社勤めを経て23歳ごろに入社します。それま での写真植字の技術を用いての印刷物制作から、Macを 使用してDTP化されていきます。人の入れ替わりが激しかったのですが、人気の職業だったので、辞めてもすぐに人が入るということを繰り返すうちに、やがて柊さんが一番の古参社員となります。

自分に対して何か言える人はいない状況で、暴君的になっていきます。他の社員さんのすることすべてが自分 の思い通りでないことがとにかく腹立たしくて、会社の中で怒鳴り散らす日々でした。

親類の紹介で同友会に入会しますが、長い間その状況は続きました。自分が毎日深夜まで仕事をしなければならないのは他の社員たちのせいだと思っていたと振り返 ります。何時間も立たされて怒鳴られた社員さんは、そのころはそれが普通だと思っていたそうで、怒鳴ったところで何の効果もないことに柊さんが気づくのは、あとになってからです。

1,000万円の赤字

2014年9月、社長をしていたお父様が会長になり、 柊さんが社長に就任します。その期は80万円の黒字で終わりましたが、その翌期からは200万円の赤字、 250万円の赤字となります。当時は期の途中で数字を見 ることは全くしていませんでした。「こんなに仕事をし ているのに、そんなものなのかな。決算賞与を出したからかな」くらいにしか思わなかったそうです。そしてとうとう、2018年4月の決算は1,000万円の赤字。銀行に借りに行ったところ「次は貸せませんよ」と言われます。それまではプレイングプレイヤーだったという柊さ ん。無計画な採用などいろいろしてしまったことが原因 だと思ったそうで「やばい。これではあかんのや。誰かが何かしていかんと赤字が続く」と、意識が変わりました。

同友会のコンテンツを生かし、学びと実践

このままでは駄目だという危機感をもって、自社の立て直しに取り組み始めます。 まずは青年部会在籍時代の仲間が開催していたMG研修を受講。MQ会計の理論をもとに、リアルな数字の捉 え方と、会社経営における利益の出し方を学びました。 そしてもう一つ、経営指針確立・実践セミナーを再受講 し、経営計画の大切さも同時に学び、その実践に取り組んでいきます。

具体的には、数字の見える化を行いました。自計化 し、月次決算により現状把握を月次で行えるようにしま した。それまでの場当たり的な経営から、きちんとした 計画のもとで会社経営を遂行できるようになりました。 それまでは、今行っている仕事がいくらの売上になるのかなど、誰も考えたこともなかったし、知ろうとしてもわからないといったことも多かったそうです。けれどこういった取り組みにより、一生懸命に目の前の仕事をするだけではなく、全員が数字を意識して仕事をするようになりました。

そのころから、期首と中間決算後に、全社員対象に報告をしています。月次決算も3日以内に出すようにしています。

社員とともに

経営指針確立・実践セミナーで使用したフォーマットは「自分も書くけど、みんなにも書いてもらうものだとしか思わなかった。こうなりたいということを具体的に書いてもらっている」と言う柊さん。最終的には一つにまとめますが、社員一人ひとりが書いたものも社内で共有し、感想などを聞いています。

重要だと捉えているのは1時間当たりの生産性で、どの業務で1時間当たりいくら稼いだかの管理をしていて目標値にもおいています。生産性を上げるためにはどうしたらよいかを皆で考え、実現に向けて計画立てて取り組んでいます。

例えば、生産性を上げるためには新しい技術を取り入れることが必要だとなれば、研修に行って学んでこよ う、となります。それは自分たちがやりたいことを実現するためであり、実行しなければ、実現できなくなるか、遠くなるわけで、決して近づくことにはならないわけです。

同友会では、継続して実践するための仕組みづくりも学びました。社内の環境改善には、委員会活動を取り入れています。

全員でのこうした取り組みにより、2,000万円あった累積赤字は4年で解消できました。

富士光芸のこれから

柊さんは、ここ数年社員さんたちと計画づくりをする中で、それぞれが自分のしたいことを、会社を通して実 現していけたらいいという思いにいたり、以前つくった経営理念を掲げることをやめました。「しっくりこなくなった」のだそうで、富士光芸と社員さんのこれからが 表れるような理念をあらためて成文化したいと考えています。同友会で学んだことに愚直に取り組み続け、ようやく、赤字という経営危機を乗り越えた柊さん。今はまだ経営理念を全員でめざす会社にはなっていないという思いがあるのかもしれません。この先さらに社員さんとともに成長しながら、富士光芸だからこそできることを追求していきます。

 

取材を終えて

柊さんの今回の取材を機に支部の方々とも話をする中で、ようやく気付きました。

書籍「人を生かす経営 中小企業における労使関係の 見解」の「経営者の責任」の章に「経営者は企業の全機 能をフルに発揮させて、企業の合理化を促進して生産性 を高め、企業発展に必要な生産と利益を確保するために、全力を傾注しなければなりません。そのためには、 われわれ経営者は資金計画、利益計画など長期的にも英知を結集して経営を計画し、経営全般について明確な指 針をつくることがなによりも大切です。同時に現在ほど はげしく移り変わる情勢の変化に対応できる経営者の能力(判断力と実行力)を要求される時代はありません。」とあります。

経営指針確立・実践セミナーを受講した際、この箇所にはマーカーを引いています。とにかくまず、このことを継続して行えるようにしなければなりません。

(取材:新、谷澤、北川/文:北川/写真:谷澤)

同友会 私の楽しみ方

「MG(マネージメントゲーム)研修」を始めたのは同友会つながりです。 きっかけは青年部で、その後、個人やグループでMGを開催する会員仲間に、よい タイミングで声をかけてもらったことで、続けることができました。 今では、東京など遠方で開催されるものにも参加しています。MG研修は丸2日 間を要します。宿泊も伴うため、旅費も含めると1回8万円と費用もかなりかかり ます。それでも行きます。日本全国から参加者が集い、刺激と学びがたくさん得ら れるのが魅力です。

 

 

取材をしてようやく真の課題が見え、会員の人となりを知る。情報化・広報部員の役得かも。 学びを深める扉を開けてみると、自身の課題とも重なっていく。

人を生かす経営とは。

支部の中で「人を生かす経営」の実践企業を紹介して、と 北川さんから聞かれて真っ先に浮かんだのが柊さんでした。 本文にもあるように、社内で社員さんを怒鳴り散らしてい ると聞いていましたが、いつのまにかそういう話を聞かなく なりました。怒鳴って不満を社員さんにぶつけるよりも、怒 鳴らなくていい会社にする方がいいと気付き、社員さんと対 話することを始めました。柊さんが会社で社員さん一人ひと りに向き合っている姿が、思い浮かびます。 今回「経営理念はありません」と話していたのが印象的で す。柊さんは社員さんみなさんからお話を聞いて、無理に一 つにまとめずにそのままを生かしています。そして、それが 一つの言葉にまとまったときに、どのように柊さんと会社が 変わるかすごく楽しみにしております。

(大阪中央ブロック/中央南支部 新)