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Osaka Doyu-Kai

vol.6

特集「 今こそ、変化の先に踏み出そう!」

求人と教育と指針との三位一体経営

Profile

大阪南ブロック/かんくう支部/2016年度入会

株式会社 ナガセテクノス 代表取締役

宮本 在浩

所在地:大阪府和泉市テクノステージ3丁目4番20号
URL:https://www.nagasetechnos.com/
設立:2010年5月 /資本金:300万円 /年商:9億9,600万円 /社員数:38名
事業内容:プラスチック原料着色加工・販売、リサイクル原料開発、加工、プラスチック成形品加工、製品開発、金型設計・製造

ナガセテクノスはプラスチック製品の製造・加工をなりわいとし、原料の着色から成形・組立までを一貫生産しています。

宮本さんは2代目。とはいえ、ここまでの道のりは宮本さんの穏やかな雰囲気とはまったく違った試練の連続でした。

 

 

ナガセテクノスの設立

ナガセテクノスの前身は、宮本さんの父が1985年に設立した同業の会社です(現在は廃業)。リーマン・ショックの影響で業績が悪い中、製造部門を独立する形でナガセテクノスを設立し、宮本さんが社長として就任。前身の会社から社員をすべて移動させスタートしました。その後業績を伸ばし、2014年に取引先の閉鎖する工場を引き受け新工場を設立。破天荒だった父は新工場開始直後、社員確保に自分の知り合いや同級生など手当たり次第雇用していきました。ベトナム留学生も含め一気に社員が55人まで膨れ上がりましたが、その後、大量に退職していったのは言うまでもありません。何のスキルも社員教育もないまま、そこに生きがいが生まれるはずもなく、そのうち、会社の経理にも不信感が出てくるようになりました。名前だけ社長だった宮本さんは会社を私物化していく父の経営に嫌気がさして、ついに動き出しました。倒産し路頭に迷うことのないよう、経営者として会社を立て直す決心をしたのです。ここからがナガセテクノスの再スタートでした。

 

 

宮本さんの感じた同友会の魅力

同友会には取引先の社長(元会員)からすすめられたことがきっかけで、2016年に入会しました。入会して一番衝撃を受けたのは、自分の話を親身になって聞いてくれる人たちがいるということでした。それまで、父や叔父である専務と話をするも、全く聞き入れてもらえず、誰にも経営の話をすることができなかった宮本さんにとって、それほどありがたいことはなかったと言います。1カ月後に会っても覚えていて心配してくれることに、人とのつながりとはこういうことなのだと感動したそうです。聞いてくれる、見ていてくれる、気にかけてくれるという信頼感は社員に対しても同じことがいえると気付きました。そこから同友会での学びをどんどん実践し、企業改革を始めました。理念と経営指針書の重要性を知ると経営指針確立・実践セミナーを受講する前に指針書を作成してみました。また、会議のすすめ方も同友会で学んでいなかったらわからなかったとのこと。とにかく、早く改革をすすめなければ、会社を倒産させてしまうと、必死に学びと実践を繰り返してきました。

 

宮本流社員教育

「宮本さんといえば、社員教育」と言われるほど、求人と社員の教育には重点をおいて経営をしています。過去には離職率100%という辛い経験や、25人採用して26人が退職した年もありました。そのような経験から、求人に費用をかけているだけでなく、面接や採用、社員教育も試行錯誤しながらすすめています。まず面接には1人に約2時間を2回も費やして、仕事内容から理念などを話し、とことんヒアリングをし、現場の見学もしてもらっています。入社してこんなはずではなかったとすぐに辞められると、会社側だけでなく、求職者にとってもいいことは何一つないので、とにかく納得してもらえるよう説明するそうです。そして、求職者には自社だけでなく他の会社にも面接にいってもらうことも勧めています。比較してそれでもナガセテクノスを選んでくれることが大切なのだと。また社員採用の基準は「人柄」。どんな高学歴でも仕事ができるかどうかは別問題で、2時間の面接での印象で決定しています。長時間の面接でも最後まで真摯に受けてくれるか、受け応えの中から社風に合っているかなどを見極めます。この取材をした数日前には、高松出身の人を雇用したそうです。インターネットから応募があったその社員さんは大学の学費を自らのアルバイト代で払っていこうにも、とうとう払えなくなり中退。就職先を探してナガセテクノスを見つけました。その働く意欲をかって採用、ベトナム人と同じ寮生活をするための引っ越しには、宮本さん自ら高松へ迎えに行き、親御さんに「お預かりします」とあいさつをしてきたそうです。

採用した社員をここまで大切にする宮本さんの心は、迎え入れる社員にも引き継がれており、ある部署で仕事に行き詰まった社員を他部署の社員が引き受けてくれたりするそうです。

 

ワクを作って繰り返すことで仕組みになる

社内ではさまざまな委員会を作っています。ISO委員会、広報委員会、職場づくり委員会、新製品開発委員会、日本語習得委員会を社員が主体となって運営しています。最初は若い・ベテラン関係なくコミュニケーションをとることを目的としていましたが、今では社員が率先して充実させています。委員会や指針書で決めた小さな目標を一つひとつ達成することが、最終的には大きな目標に影響していくことを、実践から伝えています。毎日のステップで目標が達成されていく、だから細かく行動プランを立て、委員会の会議や部署ごとの会議は営業時間に行われているものの、仕事の成果にはほぼ影響がないそうです。逆に社内がますます活性化し、社員が成長していくことを実感しているといいます。委員会の報告内容も、最初は簡単な報告だけだったものが、ある委員会がパワーポイントを使ってプレゼンのように報告したことから、自分たちの委員会もパワーポイントを使いたいと使い方を教えあって学び、今ではパワーポイントを使いこなす社員が増えてきているそうです。

また宮本さんは、人事評価にも力を入れています。評価する人は近くで仕事を見ているリーダー社員で、客観的に見ているだけで「評価する社員が決してえらいわけではないんです」と宮本さん。リーダーの人事評価勉強会は毎週2回行われ、なんと5年も続いているそうです。

現在約40名の社員で3交代稼動を行っています。利益を落とさず売り上げを上げていくにはこうするしかないと、稼動率を上げています。10年ビジョンでは社員80名で24時間350日稼動をしながらも社員の休日日数を増やしていくことをめざすとのことです。

 

ワークライフバランス

しかし、決して仕事重視と考えているわけではなく、社員全員のワークライフバランスを重要視し、時代に合った働き方を導入しようとしています。現在社員の平均年齢は33歳。将来にわたって安定生産できる能力があるからこそ、仕事が取れているといいます。ナガセテクノスは、これからも社内の仕組みづくりに取り組み、そのレールに乗ることでビジョン達成へと着実にすすんでいくことでしょう。

 

宮本さん もう一つの顔

宮本さんはミュージシャンとしても活躍しています。ジャズのベーシストとして定期的に演奏会やライブを開催しています。全く違うフィールドがあるからこそ、自社を俯瞰(ふかん)して見て判断し、発展へとつなげているのではないかと思います。

 

 

取材して

取材中、となりの会議室では委員会が行われていました。また工場ではシャツの色が変わるほどの汗をかきながら、それでも生き生きと仕事をしている社員さんの姿がありました。できあがる製品よりも、社員さんの働く姿に惹きつけられるものを感じました。

(取材:新家、大西、山田/文:新家/写真:新家

 

同友会活動は「学ぶ」のではなく「学び取る」

同友会には経営課題解決に向けてのヒントがたくさんあります。経営指針確立・実践セミナーをはじめ、各月例会、委員会、グループ会、その他にも部や企業変革支援プログラムなど、たくさんあります。

その中でも学びの基本は毎月の例会といわれています。よく月例会でいわれるのが「本日の例会で一つでも学び実践していきましょう」です。しかし、毎月真面目に例会に出席していても自社を変革し発展している会員はそう多くありません。

今回特集で取り上げた宮本さんは、同友会での学びを実践し結果を残しています。どこにその違いがあるのか?宮本さんは自身が経営指針確立・実践セミナーを受講する時も、受講前に自ら指針書を作ってからセミナーに挑みました。このことからも、同友会にある多くの学びは待ち受けの状態ではなかなか実践に結びつかないものであり、自らが課題を持ち、変革のヒントをつかみ取りに行く姿勢がないと会社を変えることができないと気づかされた取材になりました。

(編集長 山田 雅之)