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Osaka Doyu-Kai

vol.103

わが街探訪

しゃれのある縁起物で商売繁盛を願う船場商人
〜森一鳳の『藻刈舟』〜

Profile

大阪中央ブロック/中央南支部

エス・ケー・データ株式会社

北川 眞里

幕末から明治にかけて大坂で活躍した絵師、森一鳳(もりいっぽう)をご存知でしょうか。

一鳳は、円山応挙の高弟で動物画の名手といわれた森徹山の養嗣子*となり、写生画風を継ぎました。肥後熊本藩細川家のお抱え絵師も務め、当代一流の絵師として名をはせていた一鳳は、花や鳥などの自然をモチーフにした絵を多く描き、明治の初めに亡くなるまで、季節感あふれる華麗な作品を残しています。
*昭和22年の法改正まで続いた制度の一つで、家督相続人となる養子のこと。

舟運の妨げになる湖沼や河川に茂った藻を刈り取る舟「藻刈舟」は、夏の景物として多くの画人が創作の題材にしていました。「藻を刈る」が「儲かる」に掛けられるのがその理由です。中でも一鳳の作品は「一鳳」を「一方」と読み替えると「儲かる一方」となることから、縁起を呼ぶと評判になり、大坂の商家で特に人気を博しました。

笠と蓑(みの)を身につける姿に雨中の光景とし、そぼ降る雨は、淡墨による刷毛で淡く描かれることが多かったようですが『雨中藻刈舟之図』では金泥が用いられました。お金が儲かることが含意されていたことが想像できます。当時の大坂船場の商人たちが床の間に飾ろうと競って買い求めたとのことです。

2022年の早春に開館した大阪中之島美術館で、開館1周年記念特別展として今年の1月から4月にかけて開催された「大阪の日本画」では、『藻刈舟』(大阪中之島美術館所蔵)と『雨中藻刈舟之図』(大阪歴史博物館所蔵)の2作品が展示されました。

森一鳳『藻刈舟図』関西大学所蔵

画像の『藻刈舟図』は関西大学デジタルアーカイブ<https://www.iiif.ku-orcas.kansai-u.ac.jp/osaka_gadan/204626005#?page=1>よりの転載です。

 文化の変遷で、日本間が少なくなった今日では掛け軸を掛ける場所もなくなりつつあります。美術館や画廊などでしか見かけられなくなった日本画、残念な気がします。

大坂商人にもてはやされた墨絵の画壇、森一鳳の残した『藻刈船』を誌面でご鑑賞いただきました。それにしても藻を刈る一鳳を「儲かる一方」と呼んでしまうなどとは、さすが商人の町大阪ですね。もしかして古民家改修といった機会に、天井裏にとんでもないお宝が発見されるなんてことがあるかも。
(編集 西岡)