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Osaka Doyu-Kai

vol.10

「 今こそ、変化の先に踏み出そう!」

10年ビジョンで紡ぐ未来

Profile

大阪中央ブロック/西支部/2020年度入会

アジアプランニング株式会社 代表取締役社長

稲見 智和

所在地:大阪府大阪市西区京町堀2-5-16うつぼGIZAビル6階
URL:https://asiaplanning.com
設 立:1994年 / 資本金:3,500万円 / 年商:20億円(2022年度)
従業員数:11名(役員を含む)
事業内容:金属加工品、ねじ、産業機械部品の輸出入卸
取引国 中国、台湾、韓国、ベトナム、シンガポール、タイ、フィリピン、イギリス

企業理念

【経営理念】
・グローバルな調達活動を通じ、モノづくり・コトづくりでお客さまの新たな価値を創造します。
・私たちは挑戦者を応援する集団であり続けます。
【行動指針】
・素直な気持ちで社会とお客さまに接し、常に共栄を考える。
・社員の挑戦を応援し、常に新しいアプローチで市場を拓く。

会社概要

今回は大阪市西区京町堀、大阪を代表する公園、靱公園のすぐ横に事務所があるアジアプランニング株式会社(以下アジアプランニング)代表取締役社長 稲見智和さんにお話を聞くことができました。

アジアプランニングは、ネジをはじめとした金属加工品の輸入・卸売を専門とする企業で、顧客に必要な部品を中国・台湾を中心とした優れた製造工場と提携して調達しています。提供する製品は、確かな品質・適正価格で供給でき、大手では請け負えない小ロット多品種受発注に対応し、価格競争力を生み出せることが強みとなっています。

入社経緯

アジアプランニングは1994年に先代が設立され中国との取引の業務委託をされていました。先代は趣味人でなぜか旅行業の資格もお持ちだったそうです。稲見さんは当時旅行関係の仕事で旅行業者にホテルを卸す営業をしていました。旅行業の資格のある企業に飛び込み営業をよくしていたところ、アジアプランニングに辿り着き、先代と大学が同窓であることが分かって意気投合。一緒に食事に行くようになったりしていたそうです。そんな中、2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行があり、旅行業界を中心に今回のコロナ禍のような大ダメージを受け、稲見さんが当時勤めていた会社も厳しくなりました。そんな折、先代から「一回うちに来たらどうや」とお声がけいただき「じゃあ1年だけ」と入社して20年、今にいたっています。

同友会との出会い

2021年12月から経営者になることが2020年に決まり、約1年の猶予があったので勉強を始めたのですが、それまで営業のトップとして関わっていたものの、財務などについては知識がなく、経営をするに当たって何をどうしたらいいかという具体的な方法を持っていなかったため、悩んでいたそうです。そんなときに日生金属商事の松浦社長の紹介で全大阪経営研究集会に参加したことがきっかけで2020年12月に西支部に入会。

入会後すぐに経営指針確立・実践セミナーを受講。ここで学び、作り上げた理念や10年ビジョンがその後のアジアプランニングを大きく変えることになりました。

理念と10年ビジョン

経営指針確立・実践セミナーで学んで作った理念の一文である「私たちは挑戦者を応援する集団であり続けます」がご自身の軸になっているそうです。そして「社員と一緒に10年ビジョンを作る」という課題が出たので実際に社員と作ってみたところ、社員も積極的に参加してくれ、そして、みんながやりたいことも数多く出てきて、社員の考えていることを知ることができたそうです。これまでは会話の中では話をしたことはありましたが、文字にすることでより具体的になったとのことでした。

現在では毎年経営発表会をしており、一方的に伝えるだけではなくワークを行ってみんなが意見を言い合いながら10年ビジョンを共有し、中期経営計画や経営方針にも参画してもらっているそうです。その会場にも工夫をこらし、知恩院や淡路島などいろいろな場所で行っているそうです。

淡路島で開催した経営発表会にて

最近社員の方が新聞の取材を受けた際に理念やビジョンの話を語っていて、浸透してきていることを実感したそうです。

 

社員との向き合い方

稲見さんは同族として会社を引き継いだのではなく、社員から経営者になったということもあり、家業とは感 じていないそうです。ですので、自分のお金という感覚 もなく、みんなで稼いだみんなのお金という意識を持っ ています。会社の数字もオープンにしています。

そして、会社の方針を決めるときも、一方的な指示はせずに「こういうことをしたいんだけど」という提案に対して承認をしてもらうようにしています。その際には 賛成・反対さまざまな意見が自由に出るそうです。特 数字をオープンにするようになってから社員の方が「判断」できるようになってきたと感じているとのことでし た。

いろいろなお話の中で「Best Place to Work」とい う言葉が出てきました。「みんなが幸せになる権利がある」ということをベー スに考え、社員満足度が上がって、社員一人ひとりが自 分たちで何をどうしていけばいいかを考え、決定し、行動することが、お客様のためになり、顧客満足度が上がる、そのように考えているそうです。

家族にもいい会社と思ってもらわないとストレスになるので、会社で働くことを家族に応援されるようにしたいという考えで、近々予定されている創立30周年パー ティーでは社員の皆さんの家族の方にも参加していただ く予定です。

リフレッシュしてくれたほうが仕事も頑張れる、子どものことなどでも休みやすいほうが家族も喜ぶからと有休消化も全日消化をめざしていたり、福利厚生でサラダや軽食、すべての飲み物を無償で提供するなどさまざまな取り組みをしていることも印象的でした。

2023年の7月、今期のスタートとともに事務所も移 転してきたそうですが、働きやすい環境のため、金物を扱っている会社とは思えないカジュアルな事務所になっています。なんと私服で働いてもOK!このような雰囲気なので、自然と経営者と社員という溝もなく、フラットな組織になっているそうです。なんだかとても働きやすそうですね。

これまで取り組んできたこと~変化と成長~

入社した当初、業務の仕組みもなく、日々駆けずり回っていた時代があってストレスを感じていたそうで、仕組み化やストレスを感じないようにさまざまな取り組みをしてきました。

例えば、これまではネジだけを扱っていましたが、金属加工品を増やして幅を広げたそうです。結果として元々の顧客数は8社程度だったのが今では130社にもなっているとのことです。

また、事業の数値があまり管理できていなかったこと を改善して、製品・注文ごとの利益を見える化した結 果、業績が好転したそうです。輸入業は現金支払いになるので資金繰りが問題になりがちなのですが、お客様や仕入先と交渉してキャッシュ・コンバージョン・サイク ルが適切になるようにできたそうです。それによって資 金繰りに余裕ができると社内の雰囲気が良くなったと話 していました。

何か意見が出たら「理念にあるんだからやったらいいじゃないか」という姿勢で日々社員の方と向き合っていて、最近では社員から「CADを学びたい」との声が上がり研修に行くようになる人が出たり、人を育てるという点から人事をやりたいという人も出てきたりしているそうです。「私たちは挑戦者を応援する集団であり続けます」という理念に基づいて社員の提案を積極的に取り入れてきた結果ではないかと振り返っていました。

これから

いろいろな取り組みをしてきた稲見さんですが、実際にはこの数年はコロナ禍、ウクライナ情勢、物価上昇、円安などで大変だったそうです。何かプラス要素を作ら なければとさまざまなことに挑戦した結果、今にいたっているそうで、困り、悩みながら取り組んできたことが花開き、自信にもなっているとのことです。

新しい展開も考えていて

・外国製であることを理由にせず、品質保証をしっかりしたい

・自社のアイデンティティーを確立するために、自社ブランドの製品を出していきたい

・もしかしたらM&Aも!

など夢の膨らむ話を聞かせてもらいました。

この2年間で4人も採用したとのことで、ますます積極的に取り組んでいくようです。

 

 

取材を終えて

以前同じような金属部品の業界にいたのですが、今回 エレベーターを降りて事務室に入った瞬間に驚きました。とても同じ業界とは思えないおしゃれな入り口。そ して事務所の様子や社員の方々の表情や雰囲気がとてもすてきだと感じました。そして、そんなことを思いなが らお話を聞いて深く納得しました。

稲見さんは元々営業だったとのことで、その時の経験からか、社員の方一人ひとりの幸せに対して役立ちたいという思いをお持ちのようです。「みんな幸せになる権 利がある、みんなそれぞれの人生があるという思いが根 底にある」と語っていたことが印象的でした。

これからのアジアプランニング株式会社の成長を応援したいと思いました。

(取材:岡室、北川/文:岡室 写真:岡室)

 

同友会 私の楽しみ方

・年代の近い経営仲間ができ、刺激になる。

・他社での成功事例をダイレクトに取り込める。

・発表できる場がある。

 

大切にしたいこと

会社という器を通して、誰もが活躍できる場をつくれる のではないかと思ったのをきっかけに経営に携わるようになった私。けれど、秋ごろからメンバーのキャパシティー を超え続けている業務があり、昨年の暮れ、その進捗管理 をしている社員から「このままではつらいです。これ以上 みんなに無理は言えません。いったいどうしたいんですか」と強い口調で打ち明けられました。当初の思いの実現に向けて、自分が大切にしてきたことがあったのに、日々に追われる中、おざなりになっていたことを思い知らされました。

取材中に何度も「ストレスはよくない」と口にしていた稲見さんは、改善に向けてしっかり取り組んで今にいたっています。しんどい時期が続くとしても、皆が前向きに なって取り組めるよう、私だからこそできることを一つずつ行い、皆と共に前に歩んでいきたいと思います。

(情報化・広報部 北川 眞里)