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Osaka Doyu-Kai

vol.4

特集:「 経営指針・10年ビジョンって何?ビジョン2020との関連は?」

発達障害の方々と地域がつながりあうそんな社会に生きていきたい

Profile

中河内ブロック/東大阪第二支部/2012年度入会

NPO法人発達障害サポートセンターピュア 理事長

檜尾 めぐみ

所在地:大阪府東大阪市御厨南2丁目
URL:https://pure-higashiosaka.com
設立:2006年6月 東大阪発達障害支援の会ピュアとして法人格を取得
社名変更:2011年12月 特定非営利活動法人 発達障害サポートセンターピュアに変更
年商:1億9,300万円(2021年3月期)
社員数:42名(正社員16名 非常勤26名)
業務内容:発達障害に特化したサポートセンターとして、乳幼児期から学齢期、成人期にわたり寄り添い、自立に必要なスキル学習、就労支援および生活支援事業を業務とします。

施設のご案内

梅雨明けの午後、東大阪御厨に檜尾さんを訪問しました。白壁がまぶしいばかりの4階建てのビルの正面玄関には幾種類もの植栽が施され、緑の中に集うカフェテラスのような雰囲気です。法人設立のころから多様に拡大してきた支援事業を1カ所に集中して営める場所がほしいと思ってきた、その夢がかなって竣工したのは2018年9月です。1階には児童発達支援、放課後デイサービス、東大阪発達障害相談支援センター、メインダイニングルーム、事務室などが設置されています。2階は就労継続支援B型の業務。3階は生活介護、4階はショートステイ、ダイニングサンになっています。乳幼児から成人まで途切れることのないサポートをめざした施設がここに誕生しました。

 

 

ひたすら事業計画をすすめてきた日々

起業時は事業所をマンションの1室から始めて、利用者さんのニーズに応えるよう業務内容を増やしてきました。十分な支援活動をするために、広く全体の動きが見える施設がどうしても必要になったなど、現在の施設建設の理由を話してくれました。ただ優しく安全に支援するだけでなく専門の知識を持ってスキルアップにつなげたいと考えてきました。檜尾さんの長男が自閉症という障害をもって生まれてきたことで、壮絶な子育てを経験したと言います。今28歳ですが、成長当時自閉症に関する情報は皆無でした。母として自ら勉強していくことを始めました。同じ悩みを持った親の会を作り、それは最初3人から100人を超えたこともありました。みんな地域から孤立していたことから「安心して自閉症の子どもたちを遊ばせる居場所を作ろう!」と提案し、東大阪市の障害福祉課に相談。2006年より法律の改正でNPO法人でも障害福祉サービス業の認可が下りることとなり、6月に法人格を取得。続いて8月業務の認可が下り、東大阪発達障害支援の会ピュアの活動がスタートしました。

Welcomeボードの前にて

 

 

研修と資格に基づく支援と東大阪市の福祉行政

自閉症の支援技術を持つ専門医を探すことが難しい状況において、檜尾さんは自ら勉強して自閉症スペクトラム支援士の資格を取りました。この学問はアメリカのデラウェア州とノースカロライナ州で生まれたそうで、あるとき思い立ち施設に見学に行きました。その後は日本自閉症スペクトラム学会において、自閉症をテーマとして身近に感じた要望される支援を学会で発表してきました。そして特筆すべきは東大阪市の行政とスクラムを組んだことです。相談支援専門員となり発達障害児(者)支援システム構築プロジェクトのモデルケースとなって10年余り、市の福祉行政と福祉計画になくてはならない存在になっていきました。

 

 

地域とのつながりを築くための苦悩の連続

法人設立10年目に新施設計画を立案し、直ちに行動に移したものの、まず土地の確保に苦労しました。総建築費の予算は3億円。土地までは買えないので定期借地権50年の設定で地主さんとの交渉に入ります。施設を建設するにあたって近隣の住民や商業施設に対して了解を求める時には、思いがけない抵抗にあいました。反対意見、強烈なバッシング「障害者は来ないでくれ、土地の値段が下がる」などです。経営指針書の開示やビジョンを語り、一人ひとり丁寧に説明していきました。最終的にその場を取り持ってくれたのは自治会長さんです。「この土地がお役に立つのなら」と地主さんの応援の言葉も聞かれるようになりました。2021年度の利用者実績は総利用者が130人。学齢期の児童が80人、18歳以上の成人期の方が50人です。相談件数は日々増えていき、2カ月お待ちいただいている方もいるそうです。

 

 

夢へ向けての資金調達

「主婦からの起業で、若いときはただ事務員でキャリアを持ったこともない、そんな私が3億円の契約に押印することを考えると手が震えて夜眠れなかった…」と檜尾さん。そこに大きな救いの手が差し伸べられます。何か公的資金を受けられるのではないかとの助言で東大阪市に相談し、長い間の行政との活動実績が実を結びました。これだけの収容人数の施設であり、東大阪市の福祉計画に合致すること、専門の知識、資格を持ったスタッフによる運営と、自閉症スペクトラムの支援技術分野で著名な医師の協力を得られるなどの条件がそろい、国庫補助金1億6千万円の取り付けが決定しました。残り多額の借金を返済する覚悟を担うのは、同友会経営指針成文化セミナー(受講当時の名称)において真っすぐに、その指導の通り、スタッフとともに作った経営指針書でした。