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Osaka Doyu-Kai

vol.5

「 一人ひとりが輝く未来を切り拓く企業」

共育から新たな文化を拓く ‒ DiCE JAPANが描く未来 ‒

Profile

大阪中央ブロック/西支部/2022年度入会

DiCE JAPAN 株式会社 代表取締役

中村 拓真

本社所在地:大阪府大阪市西区江戸堀1-23-19 グランビルド江戸堀7F
URL:https://dicejapan.co.jp
営業所:東京 名古屋 那覇 / 設立:2019年4月25日 / 社員数:22名
事業内容:SES(IT技術者提供、受託開発、エンジニア研修)
電話番号:06-7777-2616 / FAX:06-7777-4424

共育から新たな文化を拓き 煌めいて、幸せの波紋を描く

会社概要

 DiCE JAPAN株式会社(以下DiCE JAPAN)は、SES(システムエンジニアリングサービス)というIT技術者提供のサービスを提供し、システム開発、エンジニア育成研修、健康経営支援など、幅広い業務を展開している会社です。今回取材で会社を訪問した際、会議室にサンドバッグが置かれていたことに驚きましたが、ボクシングを取り入れたフィットネスジムも運営しているそうです。

 

 

中村さんの経歴

 そんな会社を経営している中村さんは、かつて大手携帯キャリアの代理店などで店舗管理や営業に従事し、社会人2年目から10年以上にわたって管理職としてマネジメントや人材育成にまい進してきました。さらに、大学時代から学んでいた心理カウンセリングの知識・技術を生かして養成団体に所属し、スクール運営や講座作成なども行い、講師としても国内外で経験を積んできたそうです。

 

 

創業のきっかけ

 DiCE JAPANの設立は意外にもペーパーカンパニーとして始まりました。

 前職では携帯の販売員に加えてフリーランスの営業のような仕事をしており、スマホ決済の代理店の権利やスマートフォンアプリの代理店権利を獲得するような業務も行っていました。

 ところがその会社が2019年に倒産することになりました。その際、代理店の権利を中村さんに移したいと取引先が申し出てくれたそうなのです。権利を移すには法人であることが必要となり、DiCE JAPANを設立することになったのです。

 そして、そのタイミングで20年来の後輩から「システム会社のマネジメントのコンサルをしてほしい」との依頼があり、それを請けたものの、その会社の状況は厳しく、オーナー社長に解散を進言する結果となりました。当時その会社には10名程の社員がおり、みな再就職先を探していました。しかし、そのうち2名は経験不足ということで次の転職先が見つからなかったため、その二人を中村さんが引き取ることになり、右も左も分からないSESという技術者提供業を始めたのです。これがペーパーカンパニーを作ってわずか2カ月後のことでした。

 

 

右も左も分からずに

 右も左も分からない、そんな状態のなかでも、中村さんは先を見据えてなんと3人目の技術者を採用し、SES事業を本格的に始動しました。今まで経験したことがない業種でしたが、中村さんはこれまでの営業経験から同業のリストを片手に片っ端からメールと電話で営業し、会ってくれるところには積極的に出向いて商談をするという毎日でした。そして、さらに求人をかけ2名を追加し、5名体制にまで拡大。

 SES業界では、人材を提供できなければ売上が上がらず、しかし固定費としての給与の支払いはしなくてはなりません。業界に長くいれば融通し合うこともできますが、未経験の中村さんにはそれができず、専門用語に圧倒されることもしばしばあったと言います。それでも、中村さんは粘り強く活動した結果、面白いと思っていただける企業も出てきて、今ではパートナーとして仕事ができるようになり、事業は軌道に乗り始めました。

 創業以来こだわっていることの一つはプログラムを自ら作らないことです。今年で6年目を迎えたものの、いまだにプログラムを書くことはありません。自身がプログラムを学び始めると、どうしても自分で手を動かしたくなる性格であるため、あえてプログラミングは学びつつも手を出さず、営業とマネジメントに専念することにしたそうです。

 もう一つのこだわりは、未経験者採用です。SES業界では経験者を求める企業が多いのですが、あえて未経験者を採用し育成しています。理由は二つあり、一つは経験者採用は好条件がないと厳しく、経験者確保の競争に巻き込まれても現状では対経験者の採用市場で勝負ができないと判断したこと。そしてもう一つは、2030年には最大79万人IT人材が足りないという国の予測があるものの、手間とコストが掛かることから業界全体では「未経験者を育てる」という機運が高まらず、未経験からの育成に強い企業は社会にとって需要が生まれ、独自の強みになると考えているからだそうです。

 

 

黒字化とコロナ禍の影響

 DiCE JAPANは、設立から1年足らずの2019年11月に早くも黒字化を達成しました。しかし、2020年に入り、新型コロナウイルスの影響で売上の2/3が一時的に消失するという厳しい状況に直面しました。この厳しい状況のなかでも、雇用調整助成金を活用し、社員を離職させることなく、満額の給与を支払い続けることで危機を乗り越えました。

 しかし、このままではより厳しい状況になってしまいます。

 悩んでいたところ、2020年9月にコロナ関連の仕事が舞い込みました。前職の携帯業界のつながりから依頼を頂き、東西合わせて100名のIT技術者を集めるというプロジェクトを、親請けとして独占的な立場で請けることができました。社歴が浅い会社なのになぜこんな大きなプロジェクトを請けているんだと疑われることもしばしばあったそうなのですが、これを取り逃したら終わるという気持ちで、毎日2~30名と面談、深夜12時を過ぎるまで人集めを行い、なんとかIT技術者を集めることに成功。危機を乗り越えることができました。

 このご縁も中村さんのこれまでの人となりがなしえたことだと思います。

 

 

同友会入会のきっかけ

 2022年7月に中村さんは同友会に入会しました。創業後はコロナ禍もあり怒濤のように時間が過ぎていたのですが、ふと「経営の勉強をしていない」と気付いたそうなのです。なんとか黒字にはなっているけれど、経営のことも知らないし、決算書も分かるようで分からない。そんなことでこの先大丈夫だろうか。そんな不安からさまざまな会に参加したのですが、10年ほど前に勤めていた奈良の会社の経営者が同友会に参加されていたことを思い出し、同友会の例会に参加。そこで衝撃を受けたのが決算書や数字をオープンにしているところでした。数字はいいときも悪いときもあるけれど、それをオープンにぶっちゃけることができる、意見交換ができる。そこに魅力を感じて入会を決意しました。

 

 

同友会での学び

 同友会に入会したことで、中村さんは経営理念を見直す機会を得ました。入会前にも理念は作っていたものの、いろいろ勉強して作ったつもりでも経営をしていない状態で作ったため、どこか魂が入っていないと感じていたそうで、創業して5年というタイミングで経営指針確立・実践セミナーを受講し、作り直すことにしました。文言の意味が完全に別ものになったわけではありませんが、そこに込める思いの質が格段に変わったと実感しています。

 また、中村さんは会の運営にも積極的に参加しています。これまで同業者以外の経営者とまともに触れ合うことがなく、異業種の経営者の話を聞くことでさまざまな学びがあるのが面白いと感じているそうです。

 そして同友会の経営者との交流を通じて、組織の中間管理職としての役割を再確認し、挑戦し続けることの重要性を学び直しているそうです。「失敗しても命までは取られないから挑戦できる」という考えのもと、社員たちにも積極的に挑戦を促し、自由な発想で業務に取り組む環境を整えています。

 

 

今感じている課題

 同社が直面している課題の一つが、組織の一体感です。もともとSESという枠組みは、社員がお客様の事務所に常駐して仕事をするスタイルなので難しい特性があるうえに、コロナ禍以降に採用された社員たちとは直接のかかわりが少なく、全体研修や日常のコミュニケーションが十分に取れていない現状があります。これを解消するために、管理職研修や評価制度の見直し、情報のタイムリーな伝達を徹底する取り組みをすすめ、組織の一体感を高めて社員のモチベーションを向上させたいと考えています。

 

 

これからの展開

 これまでDiCE JAPANの柱となっていたのはSESと受託業務でした。そこに新しい柱としてエンジニア研修が加わっています。SES業界は経験者を採用する企業が多いのですが、こだわってきた未経験者採用が、実は未経験者を一人前の技術者にするという自社の強みを産んでいたのです。未経験者にプログラミングを教えるだけではなく、仕様書の読み込み方やシステム開発の実務に即した実践など、多角的なスキルを学ばせて現場で即戦力となるエンジニアを育てるという独自のアプローチによる育成手法が評価され、口コミで広がっています。

 今では外部の企業にご依頼いただける機会が増え、新たな事業の柱になってきています。

 今後は実績と自社の強みを生かして会社のブランディングにも力を入れたいと考えていて「会社の色」を大切にしながら、顧客や社員と長期的な関係を築いていくことをめざしています。AIの進化が進むなかで、人間ならではの強みを生かし、AIでは代替できない部分に注力しながら、未来に向けた成長を続けていくことが、今後の課題とされています。

 そして、10年後には200名規模の組織をめざしたいと熱く語っていました。

 これからの中村さんの活躍に注目が集まっています。

 

(取材:岡室、谷澤、山田 / 文:岡室 / 写真:谷澤)

 

 

同友会 私の楽しみ方

 学校生活と同じように、所属しているだけでは何も楽しめません。

 関わることでこそ、得られるものが多くあります。私は入会して2年で、例会や小グループ、委員会、全国行事の実行委員、そして今年は経営指針確立・実践セミナーにも参加しています。

 その結果、経営者仲間ができるだけでなく、経営者としての姿勢や考え方を学び、経営者として未熟な私に必要なことを多く得ることができました。

 同友会を楽しむポイントは「どこにいるか」ではなく「どのように関わるか」です。もちろん、すべてである必要はありません。だまされたと思って、まずは何か一つに積極的に参加してみてください。