
Profile

大阪北ブロック/北第一支部/1990年度入会
三恵メリヤス株式会社 代表取締役
三木 健
所在地:大阪府大阪市北区中崎西2-3-28/URL:https://www.sankei.fm/創 業:1926年
設 立:1950年/資本金:1,000万円/従業員数:14名/年 商:7.4億円(2024年度)
事業内容:繊維縫製業
GOTS認証の取得
三恵メリヤス株式会社は2年前からGOTS(Global Organic TextileStandard)認証の取得に向けて取り組んでおり、現在、複数の商品で認証が得られています。GOTSは、オーガニック繊維から作られた繊維製品を供給する加工業者のための国際基準です。GOTS認証の取得には、オーガニックのプロセス管理だけでなく事業関係者の人権を守ることも求められます。現状では、日本国内でのGOTS認証取得企業は20数社にとどまっており、まだ普及しきっていません。そんななか、いち早くGOTS認証に乗り出した背景には、どのような狙いがあるのでしょうか。
GOTS認証商品のプレート
承認までの経緯 町工場を引き継ぐ
三恵メリヤス株式会社は衣料品の縫製および販売を行っています。家族経営であったため、三木さんは幼い頃から工場と近しい環境で育ち、将来は父親から会社を承継するのだろうという気持ちが自然にできていました。そのため、学生時代からビジネスに関連する勉強をしたり、部活動で小ビジネスのような取り組みをしたりしていました。
いよいよ承継を検討するタイミングで、縮小傾向にある国内繊維業界のなかで自社の行く末を案じた父親から、一度は引き継ぎを断られたものの、話し合いの末、三木さんが事業を継ぐことになりました。三木さん自身が自社に町工場というイメージを持っており、入社前は暗い雰囲気のところではないかと懸念していました。しかし、実際に戻ってみると非常に明るい職場で、従業員も前向きな人が多かったそうです。このことは、事業を引き継いでいくうえで大きな後押しになったと思われます。
GOTS認証済みのTシャツ
取材風景
激しく変化する外部環境下での挑戦
近年、日本国内の市場では、繊維、特に衣料品の大部分を輸入に頼っており、国内製品の需要は限定的です。一方で、世界的には、綿生産者の人権の扱いが問題となったり、ウクライナ問題に伴う小麦の高騰からアメリカ綿農家が小麦生産への切替により減少したりしたことから、綿製品の供給量が不足しています。さらに、円安により、グローバル市場における日本製品の価格が下落しています。ここに着目した三木さんは、輸出に力を入れており現在では売上の3~4割を占めるほどになっています。
輸出にあたっては、環境問題への意識が高い欧州に目を向け、GOTS認証の取得にも乗り出しました。オーガニックという要素を押さえたうえで「どうしたらより受け入れられるか」を追求し、多言語対応やSNSによる発信も積極的に行っています。昨今のAIの発達により、こういったグローバル展開はトライしやすくなっていると三木さんは言います。また「日本の町工場」を、地場産業としての希少性と日本の高い技術によるこだわりの製品ブランドとして打ち出す戦略を展開しています。もちろんデザインにも注力しており、ラインナップをメンズのTシャツとスウェットに絞ることで環境にやさしいうえにカッコいい」品質を担保しています。
新たな取り組み
最新の試みとして三恵メリヤスが売り出しているのは「服を大事にする」衣料用石鹸です。市販の衣料用洗剤は高い洗浄力、漂白力を追求しているため、さほど汚れていない衣類に繰り返し使用すると、繊維を傷めてしまうだけでなく、水環境にも大きな影響を与えてしまうとのこと。そこに配慮した衣料用石鹸は、過度に高い性能で地球環境を壊してしまうのではなく、必要な分だけ力を加えることで「良いものをより長く使う」という今後さらに重要視され得る価値観に沿った商品なのではないでしょうか。
環境にやさしい衣料用石鹸
(取材:後藤・畠・岡坂/文:岡坂/写真:後藤・畠)