scroll
Osaka Doyu-Kai

vol.1

「同友会的黒字企業80%をめざす」

「なにがなんでも黒字を続ける」〜社員の思いが機械に吹き込まれ、カタチになって世の役にたつ〜

Profile

大阪南ブロック/かんくう支部/2022年度入会

阪南鉄工株式会社 代表取締役

禰宜田 幸江

所在地:大阪府泉佐野市羽倉崎3-10-30 /
URL:https://hannan-iw.com
創 業:1965年 1月 / 設 立:1988年 6月 / 資本金:1,000万円 /
年 商:5億6,000万円(2023年度)
社員数:30名 / 事業内容:産業用機械部品加工及び修理

泉州でいちばんおもろいものづくり

わたしたちはものづくりの可能性に挑戦し 金属加工で培った確かな技術力で人々の暮らしを豊かにします
わたしたちは互いに信頼しあうチームワークで 喜びが循環する企業として次世代へつなぎます

 阪南鉄工株式会社は、現会長の父親が自動車修理工から転職し、自宅の横の一間に置いた旋盤1台から始めた会社です。そしてさまざまな要望に応じていくうちに、今では1,993平方メートルの工場内に数値制御の加工機が40台、その他を入れると約100台もの機械を保有。「できないことはない」と言えるほどの設備が所狭しと並ぶ様子はまさに壮観です。産業機械のブレーキやシャフトを主に加工し、産業機械の部品だけでなく、ポンプ車の部品なども受注し、多様な依頼に対応しています。

 

事業承継は突然

 禰宜田さんは結婚するまでの腰掛けの気持ちで、父が経営する阪南鉄工に入社し、事務員として働いていました。結婚後、ご主人が経営する会社を手伝うもうまくいかず、離婚を機に看護師の道へと進みました。阪南鉄工には弟さんが後を継ぐ予定で入社していましたが、社長である父親との折り合いが悪く、ほどなくして退社。それでもいつかは戻ってくれるだろうと期待をしていましたが、その望みもかなわず、弟さんは病気で亡くなってしまいました。これから会社はどうなるのかと考えた結果、禰宜田さんは家族にも相談せずに3年間勤めた看護師をやめて阪南鉄工に戻ることにしました。

 そして今から6年前の令和元年、ある取引会社の世代交代に影響を受けた父親が「うちも交代や」と突然事業承継を決めてしまいました。とにかく直感で事業を拡大してきた父親は、承継時期も直感。代表権2人で禰宜田さんは代表取締役に就任しました。

 代表にはなったものの、積み重ねてきたものがない自分に対し、父親からの風当たりは強く「わからん者は黙っとけ」と言われていました。それでも怯まず、お互いの理解を求めて言いたいことをストレートにぶつけ合いました。「会社を良くしたいという思いは共通であるからこそ、厳しく教えてくれました。加工ができない娘だからこそ、ものづくりの神髄を、そして自分の会社への思いを存分に知ってほしかったと思います」と禰宜田さんは振り返っていました。

 

 

事業再構築補助金採択からの変化と気づき

 する事なす事に反対され続け、社内で発言することすら怖くなり、もう無理かもしれないと父親に退職届を出しました。しかし、その思いは誰にも周知されず、退職届を受理されたのかも不明なまま、看護師としての復帰先も決まり退職の日を迎えました。よし!今日で終わり!と目覚めるも、湧いてくるのは涙ばかり。「まだ何もできてないのに、ここで終わるのか?私がしなければ誰がするのか」と自問自答をし、出社して父親にむかって出た言葉は「ごめんなさい。やっぱり頑張ります」でした。しかし、いくら頑張っても空回りばかりでした。そんなある日、取引先の方に自分の悩みを打ち明け「私はどうしたらいいんでしょう」と聞くと「そのままでいいと思うよ」との言葉が返ってきました。その言葉に、今まで誰かが期待する自分になろうとして、自分自身をがんじがらめにしてきたことに気づき、一気に楽になったそうです。

 そこからは自分がいいと思うことを素直に提案したり、得た情報をわかりやすくアウトプットすることで同意を得ることができたりと、少しずつ自分の存在を認めてもらえるようになりました。それまで、父親からの粗雑な扱いに社員までもが女性を見下すような発言や態度をし、気持ちの上では本当につらかったと言います。

 そのようななかで、社内の空気が変わっていくきっかけの一つとして、事業再構築補助金獲得に向けた挑戦がありました。通るわけがないと社員から散々言われながらも、自社をよく知る方と一緒に将来のストーリーを描き見事採択。みんなが手に入れたかった機械を購入することができたのです。どんなことを言われようとも、諦めずにチャレンジすることで結果がついてくることを禰宜田さんが示したことの影響は大きく、機運を高めることにもつながりました。この事業再構築補助金採択は、社外の方の協力があってこその結果で、この経験は禰宜田さん自身にも大きな学びとなりました。一人で頑張るのではなく、できないことやわからないことは発信すると誰かが助けてくれる。それは父親がこれまで多くのお客様や取引先の困りごとに対応してきたからであることにも気づくことができたのです。貸し倒れに遭ってでも、その会社と取引を続ける父親に不信感がありながらも、コロナ禍でも仕事は止まることがなかったのは、困っている人のためにできるだけ断らない父親の信念があるから受注できているのだと改めて感じることができました。

 

 

同友会との出会い

 長年、父親は他団体に属していました。その流れで引き継いでいく雰囲気ではあったものの、禰宜田さんはもっと経営の学びをしたいと考えていました。そんな折に紹介されたのが同友会でした。なんでもとりあえず調べてみる、試してみるという禰宜田さんの性格から、同友会のことを検索し続け、会員の中に取引先企業を見つけました。一気に興味がわいていき、入会を決意。社内ではまたわけのわからないことを始めるのではと思われていたようですが、自社の課題を少しでも解決できる方法を身に付けたい思いで入会しました。その課題とは目の前の仕事ばかりで組織づくりをしてこなかったこと。この町工場が組織になっていないことに気付けていなかったことでした。

 早速、言われるがまま経営指針確立・実践セミナーを受講。第1講目から「しまった!大変なところに参加した!」と思ったとのことですが、第2講では一睡もせず理念を考え、自分の深層を掘り起こしてもらい、できた理念に「これで舵が定まった」と嬉しい思いになったそうです。求人票に理念を掲載することで、若い方の入社が増え、健康経営への取り組みをすることで、ハローワークでも阪南鉄工を推してくれるようになっています。

 

 

社員の将来を考えた設備計画

 最後に、会社の強みを聞きました。特急対応力が並大抵ではなく優れていること、困ったときに相談に乗り解決への提案ができること、そしていざという時の集中力がすばらしいことだと力強く話していました。思いが一つになったときにはコミュニケーション力が発揮されるそうです。ある日、普段休まない社員さんが急に体調不良で休み、危篤状態になったとき、朝礼で「みんなでお祈りをしてほしい」と伝えると、社員みんなの心が熱く湧いていく空気を感じたと言います。仕事は社員の力で動かせているということが腑に落ちた時、想像を絶する底力をみせてくれる気がするとのこと。

 そこに、人の良さを見つけることが得意な禰宜田さんの強みをどんどん生かして組織づくりを強化していくとともに、社員と一緒にビジョンも作成したいそうです。社内では相談できる社員も増え、自分一人ではどうしようもないことの解決にもつながっています。

 これからも周りのしあわせのためになにができるのか、父親が一生懸命社業をつないできたことを、今度は自分の息子の代にどのようにつないでいくかが、自身の一番の使命だと言います。風当たりの強いなかでも、常に学びを止めず軸を持ってまい進する姿には尊敬の念を抱きます。今後は同友会の中でも組織をけん引していくことで、組織づくりについて学び、発展していくことと思います。

(取材:山田・新家/文・写真:新家)

 

 

同友会 私の楽しみ方

同友会は知恵と刺激の宝庫!

 「議事録って面倒だなぁ……」なんてぼやいたら「こんなAIボイスレコーダー使ってみたら?」と即解決。試してみたら、もう手放せない!

 また、会員さんのお店に食べにいけば、経営の工夫やこだわりを直接聞けて、仕事のモチベーションもアップ!

 気軽な会話が仕事のヒントに変わる、そんなワクワクが詰まった場所、それが同友会です!