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Osaka Doyu-Kai

vol.3

特集「 今こそ、変化の先に踏み出そう!」

人を大切にする、人との対話を大事にする 「美しい小さな家」

Profile

大阪南東ブロック/東住吉支部/2010年度入会

社会福祉法人つむぎ福祉会 専務理事

中谷 路子

所在地:大阪市東住吉区田辺
U R L :http://tsumugigroup.net / 設 立:2001年10月(開所1989年10月)
年 商:8億9,851万円(2021年度) / 職員数:238名(正職員101名 パート137名)2023年4月現在
事業内容:障害福祉サービス(生活介護・就労継続B型・自立訓練・共同生活援助・居宅介護・計画相談)、大阪市認可保育園(2園)、中河内若者サポートステーション

基本理念

すべての人が地域の中で人としてあたりまえに生活し活動できる社会の実現をめざす

OPEN DIALOGUE(開かれた対話)

フィンランドの病院から始まった「オープンダイアローグ(開かれた対話)」は、統合失調症の治療において大きな成果を上げた手法として知られています。最近では、統合失調症の治療だけでなく、組織や会社などでも「対話」が組織課題の解決に役立つと注目されています。オープンダイアローグの特徴は、まず、対話の場を設けることです。組織内のすべてのレベルや職種の人々が自由に意見を交換し、共感し合う場を提供します。これにより、さまざまな視点や知識を持つメンバーが組織の課題や目標について深く考えることができます。

 「つむぎ福祉会」の前身は、1989年に不登校や引きこもりの若者の自立支援を目的に、現理事長が平野区に開設した「石井子どもと文化研究所」です。石井守さんが教員を退職し、自らの経験や知識を生かして、若者たちの支援に取り組んだことがはじまりでした。それから34年の歳月が経ち「つむぎ福祉会」は職員が238名という大きな組織へと成長しました。現在の「つむぎ福祉会」では、オープンダイアローグの手法を活用して「開かれた対話」の場をつくり、コミュニケーションを重視しています。この手法を用いて利用者、職員の意見やアイデアを尊重し、組織内のすべてのメンバーが参加できる環境を整えていく取り組みをすすめています。

 

RELATION(関わり)

1997年、現在の「つむぎ福祉会」の前身である「石井子どもと文化研究所」は、知的障がい者対象の小規模作業所「ポンチセぴりか」を開所しました。この小さな無認可の作業所で、中谷さんは最初はボランティアとしてチャリティコンサートの手伝いから関わることになります。当時の社会は、障がい者やその支援に対する理解がまだまだ不十分であり、社会的なインフラも整っていない時代でした。そうした中で「石井子どもと文化研究所」は安定的に施設を継続するために、社会福祉法人化をめざすことを決定します。社会福祉法人化には資金や手続きなどの課題がありましたが、中谷さんを含む数人の職員はそのために奔走します。

 「石井子どもと文化研究所」は石井さん個人が始めた活動であり、大きなスポンサーもなく資金集めは困難を伴いました。しかし、中谷さんたちの奮闘によって、2001年には多くの協力を得ることができ「社会福祉法人つむぎ福祉会」が大阪市東住吉区に設立されることとなりました。この社会福祉法人化は、組織の持続的な発展を支えるための重要なステップでした。社会福祉法人化により「つむぎ福祉会」はより広範な支援活動を展開することが可能となり、組織の成長と発展において重要な役割を果たすことになります。

GROW UP(成長)

社会福祉法人化した「つむぎ福祉会」は、青年の自立支援センターゆう、居宅支援センターコットン、そしてグループホームを次々に開所してきました。さらに第二ぴりか作業所、そらまめ作業所、ポプラ保育園の開園と施設の数は増え、さらなる成長を遂げていきます。組織は大きくなり、職員の数も増えていくことになります。この成長に伴い、組織のまとまりと方向性を確立するため、中谷さんはグループワークを行い「法人理念」の作成に取り組みはじめます。

OSAKA DOYU-GROUP(大阪同友会)

「法人理念」をみんなで作り上げた中谷さんは、職員数が増える施設内で組織をまとめていく大変な時期に直面していました。その中、知り合いの紹介もあり、経営の知識とスキルを磨くために「経営指針成文化セミナー(現在の経営指針確立・実践セミナー)」に参加します。受講したことにより、経営の視点を広めると同時に、自身のスキルアップにもつなげていきます。そしてセミナー後、大阪府中小企業家大阪同友会に入会します。入会後、数年間は、例会に時々参加するくらいでしたが、2016年経営本部主催の「人を生かす経営連続講座」に参加したことをきっかけに「人を生かす全国交流会」や「キャリア支援授業」といった支部、ブロック活動や全国活動にも積極的に参加してきました。これらの活動を通じて、他の経営者や専門家との交流を深め、さまざまな経営の視点やアイデアなどを「つむぎ福祉会」に持ち帰っていきました。

 また、ブロックの経営委員長や経営本部の経営労働部長など、自ら学ぶ機会を増やしていき、経営における知識やスキルをさらに磨いていきます。これらの役職や学びの経験を通じて「つむぎ福祉会」組織の発展や利用者への支援にも大きく影響を与えることができたといいます。

PON-CISE-PIRKA(美しい小さな家)

「ポンチセぴりか」とは、北海道出身の理事長である石井さんが命名したアイヌ語の言葉です。アイヌ語では「ポン」は「小さい」を意味し、「チセ」は「家」、「ぴりか」は「美しい」や「豊かな」を表します。この言葉は「美しい小さな家」という意味を持ちます。利用者や職員が共に美しいつながりを築き、小さな家族のような温かい雰囲気の中で支え合う居心地の良い場所であることを象徴しています。

 ボランティアからはじまった中谷さんは「ポンチセぴりか」の施設長として長年にわたり関わってきました。中谷さんが自慢だと語ることがあります。「つむぎ福祉会」に多くの人が関わり、そして離れていく中、長年施設長だった「ポンチセぴりか」で一緒に働く仲間たちは今もずっと「つむぎ福祉会」に在籍していることです。たくさん学び、苦労して組織を作り守ってきた「ポンチセぴりか」の仲間が今も一緒なんです。

 中谷さんが同友会で学んだ「対等な労使関係」の考え方は、仲間たちとの関係を「常に同じレベルであり、優劣のないもの」として築いてきた考え方です。仲間たちとの関係を大切にし、一緒に仕事を作り上げていく姿勢を持っています。仕事を丸投げするのではなく、仲間と協力して仕事を共に達成してきたことが、絆を深める一因となっていったのでした。

 

 「社員に対しては単なる労働力ではなく『もっとも信頼できるパートナーと考え、高い次元での団結をめざし共に育ちあう教育(共に育つ)を重視』して経営に取り組んでいくということです。経営者と社員では立場や役割は違いますが、1人の人間としては対等であり、お互いを認め合うことが、人を生かす経営の出発点になります。」参考:「人を生かす経営」

 人が主人公の「社会福祉法人つむぎ福祉会」だからこそ、人を大事にする理念のもとに成長してきました。これからも、人との対話を大切にするオープンダイアローグを大切に、さらなる成長を続けていくことと思います。中谷さんが学んできた同友会の「人を生かす経営」が、順調な時も大変な時もそのベースにあったのではないかと、今回の取材を通して感じました。

(取材:山田、大西、藤本/文・写真:藤本)

ぴりか工場 職員朝礼ミーティング

同友会 私の楽しみ方

わたしの現在の活動の軸は、経営労働部にありますが、そこで異業種の皆さんといっしょに活動をつくっていくことが、大きな学びとなっています。多くの方の考え方を知ることで、自分自身のものの見方や考え方を広げることができています。ほとんどが年下の経営者ばかりですが、その中に目標とする経営者を見つけると、まだまだやることがいっぱいあるなと感じます。これからも、同友会の活動を通して、多くの人と出会い、自分自身の器を大きくしていきたいと思います。

人を生かす経営が、経営者をつくる

今月の特集に出てくれた中谷さんは、ボランティアとして福祉施設のイベントを手伝ったことをきっかけに会社に関わることになり、その施設の法人化に向け中心的に活動するようになります。法人化したころには組織が大きくなり、リーダーとしてのスキルの必要性が出てきました。そんな時に同友会の経営指針確立・実践セミナーに出会いました。

 そこで「人を生かす経営」に出会った中谷さんは、経営者としての資質が芽生え始め、現在でも発展し続けています。同友会運動や人を生かす経営は、積極的に関わることで、ボランティアでお手伝いをしていた人間を経営者に変身させていく力があることを感じた取材でした。

 引退するまでは経営者として永遠に進化し続けていく宿命の私たちにとって、見本になる人です。同友会にはこのような経営者がたくさんいます。もっともっと積極的に活動し、見本になる経営者仲間を増やしていきたいです。

(情報化・広報部 山田)